第3章 過去の魂を救う物語

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 花姫は用が終えると 後は2人だけで過ごしたい。 「父上を呼ぶより あなたといる方が 楽しいもの」と 父上をさけた。  良幸にとっても ガンコ親父はけむたい存在だ。 「母上は?」 「母上には平之助の事を 話さなくてはね」  花姫は早く終わしたい感じで 急ぐ。良幸の手を引き 花姫はサササと井戸の方へ走る。  井戸まで来ると良幸が 「そっちで待ってる」と 花姫の手を放す。  花姫はうなずき 母上のいる井戸の上へ浮かび 「母上ー」と 呼ぶ。  井戸の底から 頭の黒い影が上がってきた。  良幸が少し はなれて見ていると 前は井戸から出られなかった母上が 今は顔を出して話をしている。  花姫は話ながら 良幸の方を指さすと 母上も良幸を見てほほえんだ。  幽霊にほほえまれても 取りつかれそうで恐い。良幸はうつむいて目をさける。  花姫は話しを終えると 母上に別れの手をふる。   母上も手をふると 頭がスーッと井戸の中へすいこまれた。  花姫はすぐ良幸の所にもどって、話す。 「母上は 平之助が英雄になって 喜んでいたわ。『おかげで井戸じごくから 少し解放された』っておっしゃった。死んでも良い事をすると 天国への位が上がるようじゃ」 「そりゃよかった」 「あなたのことも母上に話したら 気にいったみたい」  幽霊の母上に好かれたくないが、良幸も自分の母のほほえみを思いだし 母の所へ帰りたくなった。ほほえみは母の愛の磁石だろうか?10代前半の子どもは まだ時々親のそばにいたくなる。 「そろそろ帰らなきゃ」  良幸は マンションのある石垣の方へ歩きだした。
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