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明利は石垣の方へ向かい「こっち」と 良幸を案内する。
2人は柳の並木を通り 草のじゅうたんを歩き 城あとへ登る。
明利が何もない所で「見て!」と言う。
良幸は明利を見た。
でも明利は 黒百合城の立て札を「見て」と言ったので、古い立札の方を向いていた。
難しい漢字は読めないが「城」と「有」は読める。
明利は 元 お城があった所に立ち
「この辺がお城よ。お姫様も歩いたかしら。とっても花の好きなお姫様だったって」
説明して歩く明利の姿は気品があって まるで 現代のお姫様のようだ。
『彼女はお城の殿様の子孫のお姫様?』
良幸は そんな気がして だまってついて行く。
明利は坂を下り 網でふさがれた古い井戸をのぞきこんだ。
「ここで幽霊が出るってうわさよ」と お化けのふりをした。
でも良幸はお化けを見たことがないし、明利のお化けは かわいすぎた。
「ふーん」って 首をかしげてほほ笑んでしまった。
明利はめげずに 興味を持ちそうな所を
「見て見て」とバックをふりふり 歩き回った。
良幸はきれいな彼女に「うんうん」うなずいて うわの空で 後をついて行く。
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