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「だよなー、ひよがこの辺歩いてたら、気付かないワケないもんなー」
ヒロフミくんが残念そうにシートに寄り掛かった。当初はぎこちなかった嘘も、今ではもうすっかり慣れてしまった。嘘を吐いている罪悪感は少しあるけれど、こうした積み重ねが彼女を守る事に繋がるのだと、僕はずっと信じている。
「学校どこだべ?誰かと繋がってねぇかな?普通に一緒に飲みてぇ、つぅか、やりてぇ!」
「だから、自分の顔見ろって」]
「うっせー」
2人がじゃれ合っている間に、車を停める。「はい、そこまでー。着いたよー」間に入るように言い放つと、2人はシートベルトを外して、後ろを振り返り、自分たちの荷物を背負った。
バンから飛び降りて、「お疲れッス」と頭を下げる彼らに、「お疲れ様、また月曜日にね」と声を掛け、車を発進させる。
バックミラーに映る彼らは笑顔で大きく手を振っていた。プッと軽めにクラクションを慣らし、返事をすると、僕はようやく家路に向かう。
ヒロフミくんとテルくんが僕の下に付いてから、3年が経った。最初は高校もろくに行かずに卒業し、やりたい事もなくて、やさぐれていた彼らも、今では現場での仕事に慣れ、積極的に動くようになり、資格を取りたいと勉強をするまでになった。
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