Yesterday & Tomorrow

8/81
前へ
/81ページ
次へ
脱衣所にある洗面台の鏡の前に立ち、自分の顔と対峙する。小麦色に焼けた肌、頭に巻いたタオル、そこに映る僕は何だかとても疲れた顔をしていた。 疲れないと言えば嘘になるかもしれないけれど、スタミナはある方だと思うし、何より仕事は楽しい。 週2回のバーでの掛け持ちが体力的に辛い訳ではない。 草野球をしたり、友達と飲みに行ったりと休みの日の過ごし方も充実している。 家族との関係も良好だ。 けれど、不意に心にぽっかりと穴が空いたような気分になるのは何でなんだろう?ふぅと溜息がまた出た。そういえば、最近、溜息を吐く数が増えた気がする。 風呂に入ってスッキリさせよう。バシンと両頬を叩いて、鏡に映る情けない顔の僕に喝を入れた。 着替えを済ませ、再びリビングに向かうと、テレビの前で妹の優子が、制服姿のまましゃがみ込んでいた。 図書館から帰って来た所らしい。大学受験を控える優子は、放課後になると近くの図書館に通い詰めていた。 「もうご飯にするから、早く着替えておいで」 「ちょっと待ってよ。7時からの歌番組にひよちゃんが出るの。予約しないと」
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加