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「・・・それに・・・」
「それに、なんだ」
「・・・褥をともにしていると暖かで、熱いくらい・・・」
「睦ごとのことか」
「ばかっ・・・」
背に押しつけた稲の頬が熱くなった。
布都斯は背負うように稲の背に手をまわし、稲の身体を己の背に押しつけた。
「熱い褥になるよう、うまい夕餉を作ってくれ」
「うん・・・」
布都斯は身体をまわして向きを変え、稲を抱きしめた。外で風の音がする。
「風がでてきた。冷えてきたから雪になるかも知れぬ。日が暮れるまでに、もう一山、薪を割っておく」
「気をつけてね」
布都斯の耳元で稲がささやいた。
「わかった」
そっと唇を重ねると、布都斯は、
「対屋まで、背負ってやる」
と言って稲を背負った。
「あなたっ」
笑いながら、稲は布都斯の背にしがみつき、対屋の廊に降りた。
「もう少しかたづけてから、夕餉を作ります」
「頼む・・・」
稲は布都斯に頬ずりして手を握りしめ、布都斯を外へ送りだし、
『早く冬支度をすませ、布都斯に政を考えさせねば・・・』
と思った。
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