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布都斯と下春に促され、村人たちが広間に入った。
「寒かったろう。火のそばに座ってくれ。ちょうど、朝餉にしようと思っていたところだ。いっしょに芋粥を食おう。温まるぞ」
布都斯は炉の火にかけた鍋から、器に芋粥をよそった。
朝餉には早すぎる刻限である。そして、布都斯たち二組の夫婦には多すぎる量の芋粥である。村人たちのために作ったのは明らかだった。村人たちは緊張した。
「そのように、身構えるな」
「布都斯。仁多の衆が穀物をとどけてくれた。皆、遠呂智の件を、大いに反省している」
下春の言葉を聞きながら、布都斯は炉の近くに座った村人たちを無心で見ている。
「郷に、皆の食いぶちは、あるのだな」
「へい・・・」
「では、ありがたく頂こう」
「わしらは・・・」
「わかっている。心から反省している者を、戒めはせぬ」
「反省しているのは、わかっていますよ」と稲。
「気兼ねせずに、食べてください」と芙美。
稲と芙美の言葉に、村人たちは目に涙をうかべ、芋粥をすすった。
村人の一人が箸を止めた。
「布都斯様。下春様。おらたちは、これからどうすりゃあいい」
布都斯は芋粥の器と箸を置いた。
「これからは、遠呂智のような者が二度と現れぬよう、皆に助けてもらわねばならない」
座り直して村人たちにむかい、心からお辞儀した。
あわてて村人たちが箸と器を置いた。その場から後退りして、
「わしらのほうが、皆様を頼りにしてます」
ひれ伏した。
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