四 漢人

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「では、軍船造りを説明する。作業小屋の材料は、家を造るために蓄えてある(さと)の材料を使う。  これ、どうした。使った分は、あとで返す。そのように心配するな・・・」 「へい」 「・・・八十人乗りの大きな軍船を造る。先祖(うじがみ)の船を拡大するだけでは強度不足だ。帆負(ほい)狭智(そち)は、慎重に軍船を設計してほしい。  皆はその間に、郷と山から材料を集め、中海(なかうみ)の岸辺に作業小屋を建ててくれ。  小屋が完成したら山の樹に目印をつけ、根雪が積もったら伐採し、丸太にして(そり)に乗せ、馬に引かせて小屋まで運ぶ。  運んだ丸太はくりぬいて船底にする。船底が完成したら、足場を組んで船底に竜骨を据えて船縁(ふなべり)を張る。  船底を作る間に、鉄穴衆(かんなしゅう)船釘(ふなくぎ)を打ってくれ。  山仕事に慣れた者は木挽(こび)きして、船板(ふないた)を作ってくれ。船縁にする板だから、水漏れしないように合わせ()きする・・・。  皆は村へ帰ったら、この事を村の衆に伝え、人足を集めてくれ。  ところで、帆負。冬越しのしたくに、いく日かかる」 「干し肉など、日がたたねばできぬ物もありまするゆえ、いく日とは言いかねまする」  帆負が答えた。 「肉や野菜の乾燥は家の中でもできます。外の作業は初雪までかと思います」  と息子の狭智が言った。 「作業小屋造りは、松江郷(まつえのさと)の衆と安来郷(やすきのさと)の衆に行ってもらう。  軍船造りは、郷ごとに十人、四つの郷の計四十人が十日作業して、他の郷の者たちと交代する。日取りはおって伝える」 「承知しました」 「では、これで上集(かむつど)えを終わる。  今宵は皆、ここに泊まってくれ。  遅くなったが、夕餉(ゆうげ)も用意してある。皆、手伝ってくれ」 「わかり申した!」  (かみ)たちは下屋(しものや)から器や鍋を運び、夕餉のしたくをはじめた。
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