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「では、軍船造りを説明する。作業小屋の材料は、家を造るために蓄えてある郷の材料を使う。
これ、どうした。使った分は、あとで返す。そのように心配するな・・・」
「へい」
「・・・八十人乗りの大きな軍船を造る。先祖の船を拡大するだけでは強度不足だ。帆負と狭智は、慎重に軍船を設計してほしい。
皆はその間に、郷と山から材料を集め、中海の岸辺に作業小屋を建ててくれ。
小屋が完成したら山の樹に目印をつけ、根雪が積もったら伐採し、丸太にして橇に乗せ、馬に引かせて小屋まで運ぶ。
運んだ丸太はくりぬいて船底にする。船底が完成したら、足場を組んで船底に竜骨を据えて船縁を張る。
船底を作る間に、鉄穴衆は船釘を打ってくれ。
山仕事に慣れた者は木挽きして、船板を作ってくれ。船縁にする板だから、水漏れしないように合わせ挽きする・・・。
皆は村へ帰ったら、この事を村の衆に伝え、人足を集めてくれ。
ところで、帆負。冬越しのしたくに、いく日かかる」
「干し肉など、日がたたねばできぬ物もありまするゆえ、いく日とは言いかねまする」
帆負が答えた。
「肉や野菜の乾燥は家の中でもできます。外の作業は初雪までかと思います」
と息子の狭智が言った。
「作業小屋造りは、松江郷の衆と安来郷の衆に行ってもらう。
軍船造りは、郷ごとに十人、四つの郷の計四十人が十日作業して、他の郷の者たちと交代する。日取りはおって伝える」
「承知しました」
「では、これで上集えを終わる。
今宵は皆、ここに泊まってくれ。
遅くなったが、夕餉も用意してある。皆、手伝ってくれ」
「わかり申した!」
上たちは下屋から器や鍋を運び、夕餉のしたくをはじめた。
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