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「お邪魔します」
店に入って辺りを見回すと、怪しげなモノが目白押しだった。
変な扇子や、お札を張られた木箱、写ってはいけない人の写っている写真、凶気が表現された抽象画、普通の布のようなもの、日本刀、黒い表紙の本、冒涜的な魔導書、等々。其れ等を見ていると、再び声を掛けられた。
「いらっしゃい。何かお探しかい?」
「何も探してないです。ただ、此処が何処か知りたいですがね」
そう、僕は今居る場所さえ知らない。何故、此処に居るのかも。
「おや?」
「?」
「おやおやおや?」
そう言いながら彼女は僕に顔を近づけた。狐のお面が結構怖い。
「ふーん」
彼女は興味深そうに僕の顔を見ている。
「成る程、奇妙には思っていたけど、君は此の町の住人ではないのだね」
「そうですけど」
「なら、泊まっていくと良いよ」
「え?」
僕が此処に滞在する?
「いや、無理ですよ。学校も在りますし、妹も心配します」
「……そこら辺も後で説明するから、取り合えず奥に入りなさい」
彼女はそう言って僕を奥の居間へ入らせると、玄関先で何やらし始めた。店を閉めるらしい。
「もう閉店ですか」
「今日は君が来たからね。普段なら今から開店さ」
「はあ……」
そんなので良いのだろうか、此の店は。
「ああそうだ。其処の卓袱台を出してくれ。夕飯にしよう」
「はいはい」
「はいは千回」
「貴方が言え」
「嫌だ。君が言え」
「嫌です」
そんな事を言いながら彼女は台所へ向かった。
丁度空腹だったので、どんな料理が出るか楽しみだった。
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