夢のようなお話

3/11
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「お邪魔します」 店に入って辺りを見回すと、怪しげなモノが目白押しだった。 変な扇子や、お札を張られた木箱、写ってはいけない人の写っている写真、凶気が表現された抽象画、普通の布のようなもの、日本刀、黒い表紙の本、冒涜的な魔導書、等々。其れ等を見ていると、再び声を掛けられた。 「いらっしゃい。何かお探しかい?」 「何も探してないです。ただ、此処が何処か知りたいですがね」 そう、僕は今居る場所さえ知らない。何故、此処に居るのかも。 「おや?」 「?」 「おやおやおや?」 そう言いながら彼女は僕に顔を近づけた。狐のお面が結構怖い。 「ふーん」 彼女は興味深そうに僕の顔を見ている。 「成る程、奇妙には思っていたけど、君は此の町の住人ではないのだね」 「そうですけど」 「なら、泊まっていくと良いよ」 「え?」 僕が此処に滞在する? 「いや、無理ですよ。学校も在りますし、妹も心配します」 「……そこら辺も後で説明するから、取り合えず奥に入りなさい」 彼女はそう言って僕を奥の居間へ入らせると、玄関先で何やらし始めた。店を閉めるらしい。 「もう閉店ですか」 「今日は君が来たからね。普段なら今から開店さ」 「はあ……」 そんなので良いのだろうか、此の店は。 「ああそうだ。其処の卓袱台を出してくれ。夕飯にしよう」 「はいはい」 「はいは千回」 「貴方が言え」 「嫌だ。君が言え」 「嫌です」 そんな事を言いながら彼女は台所へ向かった。 丁度空腹だったので、どんな料理が出るか楽しみだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!