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1年遅れの新学期を迎える
昨年はどれだけ泣いたか覚えてない
だが、今年からは大丈夫
康太の隣に慎吾が居るから、笑っていられる
「貴公子だ。相変わらず美人だな」
透けるような白い肌を強調する黒い髪
色っぽい切れ長の目に、キスを誘っているかのようなぷっくり膨らんだ赤い唇
歩くだけで、本人の意思とは関係なく妖艶な色香が漂う康太に、今日も視線が集まる
「しー。貴公子を変な目で見たら覇王に殺されるよ」
「違う。鬼畜魔王に狙われるんだ」
康太が廊下をのんびり歩いていたら、些細な会話が聞こえてくる
性的な視線が怖くて、何度も吐いた
今は、彼らが近寄って来なければ平気。康太にピッタリ寄り添って歩く恋人の慎吾(清い交際中)と、親友の大貴
何故か一緒に留年して、同学年の立尾が居るのだから
「ふふ、鬼畜魔王って立尾のことだろ?酷いことするからだよ」
去年副会長をしていた村山は、肉食獣から牙を抜かれたネコに変貌している
「村山のことか?アレは元々変態だったんだよ。元に戻してやっただけだ」
康太にとって憎しみの対象だった村山は、今では哀れな子羊にしか見えない
鬼畜な変態S男だと思ってたけど、立尾にはSの仮面を付けた変態M男に見えたらしい
「アノ男がS?違うな。Sの仮面を被っただけの変態Mだ。人が犯されるの見てたんだろ?自分もして欲しくて飢えてただけだ」
立尾が言うと納得してしまう
誰が見ても、立尾はSだと分かる迫力があるから
誰もが覇王と恐れる慎吾
「何て目で俺の康太見てやがる」
「ヒィーッ、ごめんなさい」
慎吾と離れた為に、閉じ込められて犯された恐怖は忘れられない
慎吾が居れば助けて貰えるし、康太自身も強くなれる
康太を母の初音と混同した前理事長の弟大貴は、執拗に命を狙った前理事長から立尾が助けた
「ごめんな康太。辛い思いをさせて」
人に躾られたネコに興味はないと言いつつ、大貴をネコにした前理事長と村山のことが、立尾は許せなかったらしい
本気を出したSほど怖いものはないと、しみじみ思う
結構、立尾は大貴に本気なのでは?
康太は密かにそう思ってるが、康太の勘は当てにならないから分からない
そんな仲間と笑い合いながら
康太は夢の弁護士に向かって、ようやく一歩前進する
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