25 抱擁-1

33/38
前へ
/38ページ
次へ
「最後になりましたが、高橋さん――」 「はい?」 「僕の友人を、好きでいてくれて、ありがとう。できれば、今後とも、どうぞよろしくお願いします」 一連の私の行動が、何を原動力にしているのか見透かしたように、風間さんは真顔で、そんなことを、さらりと言ってのける。 課長は、何か言いたげに口を開きかけたけど、結局何も言わずに、渋面を作ってそっぽを向いてしまった。 ――ず、ずるい、課長。 私は、どう答えたらいいんですか? こんなときこそ、何か言ってくれなくちゃでしょう? 「あ、あの、えーと……」 『イエス』と答えれば、事実上の愛の告白になってしまうし。 でも、だからと言って、『ノー』とは答えたくない、複雑怪奇な女心。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

666人が本棚に入れています
本棚に追加