667人が本棚に入れています
本棚に追加
パチリ、と、
丸メガネの奥のつぶらな瞳から、きれいなウインクを一つ繰り出すと、
「それでは、また」
バイバイ、と、手を振って、風間さんは、病室から出て行った。
遠ざかる、のんびりとした、足音。
賑やかな気配が消えて、
シンと、静まり返る深夜の病室に残されたのは、毒気を抜かれた、課長と私。
どちらからともなく視線を合わせれば、自然と、笑みがこぼれた。
――助けてくれて、ありがとう、探偵さん。
それに、素敵なアドバイスも。
『君は、君自身の言葉で、説明する責任がある』
あれは、たぶん、課長に対してだけ向けられた言葉ではない気がする。
『君は、君自身の言葉で、説明を求めていいんだよ』
『勇気を出して聞いてごらん』
そう、言ってくれたんじゃないだろうか。
なんて、勝手な思い込みかもしれないけど。
最初のコメントを投稿しよう!