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北郷は逃げようと思った。愛紗の説教と春蘭との追いかけっこで鍛えられた逃げ足ならば、逃げられる。
だが、現実は無情だ。北郷はこの美女を投げ飛ばすことができなかった。それをしてしまえば、自分の中にある良心が砕けてしまう。投げ飛ばせば、精神的な死。出来なければ、精神的な死。
進んでも駄目、引いても駄目。精神的な死は、免れない。
「大丈夫です。何もしませんよ。」
そう言ったのは美女だ。無表情で言った発言は、不気味な程、辺りに響いた。
「命の恩人にそんなことする筈がありません。
………貴方は私に運命を与えました。
………貴方は私に明日を与えました。
………貴方は私に、一度壊れた夢へと向かう道を作ってくれた。
だからこそ、ありがとう。
そして、私の命は貴方のものです。」
女性はそう言った。
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