二代目サンタ

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僕がここを見つけたのは夏休みが終わってすぐ。 もう三か月も前のことだけど、そのお爺さんとは最初に「いらっしゃい。自由に読んでいっていいぞ」という二、三言言葉を交わしただけである。 本を買わず、売りもしないで入り浸っている僕が、目障りなんじゃないかと思うこともある。 でも、定期的に行っているらしき本の入れ替えをするとき、僕が読んでいる本棚は必ずそのままの形で残しておいてくれる。 だから、ここにいてもいいのかな、って勝手に甘えてしまっている。 それに、古本屋内はそんな広くはないけど、外にある大きな建物にまだまだ多くの本を置いているらしく、入れ替えで様変わりする本棚に僕は魅了されてしまったのだ。 ただ、もう一か所、入れ替えの時に決して動かない本たちがいる。 そこはぎっしりと詰まっている本棚とは違って、はじめに少し隙間を空けてから並んでいた。 それは『スパイごっこ』という題名の古い漫画。一巻はなく二巻から最終巻までそろっている。 僕も二巻から読んだ。 小学生の少年少女、六人組が『スパイごっこ』というゲームボードを買ったことで大きな事件に巻き込まれていく話だ。 一巻がなくても読んでいけるけど、一巻を読んでみたい気もする。 お爺さんも寂しそうに度々その隙間に指をかけているのも、少し気になった。
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