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なす術のない僕を引っ掛けたまま、鹿はしばらく走り続けて洋風の家にたどり着いた。
やっと暗闇以外の景色が見えたが、周りは一面銀世界。
さらにその周りは森。
この家以外に家はなく、数匹の鹿が雪の中を優雅に歩いている。
僕は乱暴に下ろされ、雪の中にめり込む。
そして鹿はそのまま仲間たちのもとに走っていってしまう。
僕は急いで立ち上がったが、雪はすでに服にしみ込んで、冷たさのあまり身震いした。
震える体を抑えるがどうしようもなく、とりあえず洋風の家を訪ねてみることにする。
この家の雰囲気から、気のよさそうな老夫婦が住んでいそうだ。
日本語通じなかったらどうしよう……
そんな不安にもかられたが、寒さの方が重大で僕は戸を叩いた。
「誰?」
そう言いながら家から出てきたのは、僕と同じぐらいの青年だった。
日本語にホッとしつつも、予想外な人物にどう対処していいかわからなくなる。
「まぁ、とりあえず家に入んな。中が冷える。」
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