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「……サンタって言えば、太った老人じゃないのか」
あまりにも堂々とした様子に僕は笑い続けることができなくなって、それでも彼の言葉を否定するように言葉を返す。
その言葉に彼は軽やかに立ち上がった。
僕にその若さを見せつけるが如く、すらりとした体で一回転する。
「想像に固定なんてないだろ?たまには若者にだってなりたいのさ。そんなにこの姿でサンタって言うのに違和感があるなら、『二代目サンタ』とでも思え」
違和感があるのは姿だけじゃない。
でも『二代目サンタ』という表現にはしっくり来るものがある。
彼は座り直すと話を続けた。
「俺たちは空想の生き物だ。空想の生き物は空想上でしか生きられない。だけど本当に俺たちを信じている者の前には時として現れられる。その時というのは俺にとっては十二月二十五日、聖なる日、クリスマスさ」
信じている者の前にだけ現れる。
それって……
「ただの幻じゃん。現実と空想を混同した人が見る幻影。ていうか、さっきからここは非現実世界とか言ってるけど、ならなんで僕はここにいるんだ?」
「君が現実に目をつぶるからさ。 現実から目を逸らしたところで、その視界に入るのは現実のもの。だけど目をつぶってごらん」
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