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二代目サンタが目をつぶった。
僕もつられてまぶたを閉じる。
真っ暗な世界で二代目サンタの声が聞こえた。
「今君の周りで何が起きているかなんて、君にはわからないだろ?もしかしたらそこでは俺が宙を浮いているかもしれないし、火が燃え盛っているかもしれない」
僕は不安になって目を開けた。
二代目サンタがにこにこと僕を見ている。
「そこで、現実世界と非現実世界の境目がなくなっちまうのさ。そして君はそんな不安定な状態からダッシャーに無理やりこっち側に連れてこられちゃったんだよ」
「ダッシャー?」
「君を連れてきたトナカイの名前だよ」
二代目サンタが窓の外を指すが、残念ながら暗くて見えない。
「ま、今日はいろいろあって疲れたろ?部屋ならあるからゆっくり休みな。ほら、スープも食べろ。食べろ」
僕は言われたとおりスープを口に運ぶ。
「どうだ?美味しいだろ?」
二代目サンタが期待の眼で僕を凝視し、僕は恥ずかしくなって口籠りながらも答えた。
「……美味しい」
満足そうに頷く二代目サンタ。
久しぶりに誰かと一緒に食べる夕食は、予想以上に美味しかった。
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