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至近距離で固まった浦野の瞳を覗きこむ。
サッと目線を逸らされたかと思うと「訊きたいですか?」と問われた。
頷くと嫌そうな顔をされる。そんなにやましいことなのか。
「だって先輩、俺のこと絶対嫌いになる」
「……?元から嫌いだぞ」
「そんなハッキリと……。今けっこう傷つきましたよ」
俺がお前のこと嫌いなの知ってるだろ。
自分でもそう言ってなかったっけ。なのに傷つくって、案外繊細なんだろうか。
悩ましげに瞼を閉じて考えこんでしまった浦野に首を傾げると、やがてビニール袋の中から箱に入った冷えピタを取り出した。
突然の行動についていけずにいる俺の額にそれが貼り付けられる。
それから前髪を整えると、浦野は自分の唇に立てた人差し指を持ってきて苦笑を零した。
「秘密です」
「ひみつ?」
「はい。でも、もし先輩が俺のことを少しでも好きになってくれたら」
そのときにちゃんと教えますよ。
そう言って微笑む浦野に複雑な気持ちを抱えながら、「……考えとく」とだけ言っておいた。
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