ゆめうつつ

23/23
171人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
え、兄さ、兄さん!? 「え、えい」 「もしかして慧ちゃん!?」 「慧ちゃん!?」 そろそろと瑛太の方を向くと思い出した、という風に声を上げて、その親しげな呼び方に俺の戸惑いは最高潮に達した。 だって、なんだよ、兄さんって。慧ちゃんとか。さっぱりついていけない。 「その呼び方やめてよ。俺もう大学生だぞ」 「ごめんごめん。それにしても久しぶりだなー、最後に会ったのって中学上がる前だろ?髪なんか染めちゃってさー」 「あんたは全然変わってないよね。もっとチャラチャラしてるかと思ってた」 笑いあうふたりに頭の中がぐるぐるする。 そんなに前からの知り合いってことは、近所に住んでて仲が良かった……とか? 気になったので訊いてみようと思い瑛太の服の裾を引っ張ると、それに気づいたようでこちらが尋ねる前に答えてくれた。 「慧介はオレの弟なんだ。小学校のときに親が離婚したから名字は別だし、オレは父さん似で慧介は母さん似だからあんまり似てないけど」 おとうと。 小さく呟いてみる。けど、まだ事態を呑み込めていない頭は役に立ちそうになかった
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!