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え、兄さ、兄さん!?
「え、えい」
「もしかして慧ちゃん!?」
「慧ちゃん!?」
そろそろと瑛太の方を向くと思い出した、という風に声を上げて、その親しげな呼び方に俺の戸惑いは最高潮に達した。
だって、なんだよ、兄さんって。慧ちゃんとか。さっぱりついていけない。
「その呼び方やめてよ。俺もう大学生だぞ」
「ごめんごめん。それにしても久しぶりだなー、最後に会ったのって中学上がる前だろ?髪なんか染めちゃってさー」
「あんたは全然変わってないよね。もっとチャラチャラしてるかと思ってた」
笑いあうふたりに頭の中がぐるぐるする。
そんなに前からの知り合いってことは、近所に住んでて仲が良かった……とか?
気になったので訊いてみようと思い瑛太の服の裾を引っ張ると、それに気づいたようでこちらが尋ねる前に答えてくれた。
「慧介はオレの弟なんだ。小学校のときに親が離婚したから名字は別だし、オレは父さん似で慧介は母さん似だからあんまり似てないけど」
おとうと。
小さく呟いてみる。けど、まだ事態を呑み込めていない頭は役に立ちそうになかった
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