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廊下に出て隣の部屋の扉を開ける。
てっきりあいつはここにいるとばかり思っていたが中には誰もいなかった。
だったらリビングか?
ゆっくりと慎重に力の入りにくい足を動かして階段を降りる。
手すりはないから壁伝いで、最後の一段を降りたあとリビングを覗いた。
「あれ、」
いない……?
電気はついてないし、キッチンの方からも音は聞こえない。
上手く思考が纏まらないまま玄関へと急いだ。
……靴がない。
あいつが履いてたスニーカーが、消えてる。
「浦野……?」
どこ行ったんだ……?
あいつ、出かけるって言ってたっけ。
ほしいものは訊かれたけどいらないって言ったし、書き置きも残されてない。
「もしかして」
学校に行った、とか。
俺が寝ちゃったからもう大丈夫だと思って。
だったら俺はまたひとりで家族の帰りを待たなきゃいけないんだ。
誰もいない静かな家で、ひとり。
ずるずるとその場に座り込んで、立てた膝に額を押しつけるようにしてうずくまる。
はやくこの扉が開けばいいのに。
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