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「……え、先輩?」
頭上から降ってきた声にパッと顔を上げる。
そこには浦野が片手にビニール袋を提げてつっ立っていた。間抜けな面してるな。
「おかえり」
「ただいま……、じゃなくて!あんたこんなとこで何して……っ!とりあえず部屋戻るよ!」
「え、ちょ」
腕を強引に引っ張りあげられて立たされた。掴まれているところが痛い。
俺より高い位置にある端正な顔には焦りが滲んでいて、それをぼんやりと見上げているとそのまま階段を上りはじめたのでついていく。
ベッドに押し込めるように布団をかけられたのでぱちくりと目を瞬かせると、浦野は何か言いたげに口を数回開閉させ、やがてため息とともに呆れた様子で訊いてきた。
「でさ、先輩はどうして玄関なんかで座り込んでたの?」
「浦野がいなかったから待ってようと思って……」
「だからってあんなとこ……ていうか熱上がってる?顔真っ赤」
「……っ」
こつん、と。
額と額がぶつかった音にピクっと肩が持ち上がる。
急に近づいてきたからびっくりした……。
あーでもなんかこれ……。
「浦野、」
「はい?」
「なんで俺にキスしたの」
あのときのことを思い出してしまって、そう訊かずにはいられなかった。
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