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「……謝るくらいならやらなきゃよかったじゃん。確かに俺はチビだったし他の奴らより上達も遅いしでからかいたくなるのも分かるけどさ、あのときは結構本気で悔しかったよ」
そこは所詮中学生だ。
ちょっとしたことで苛立ったりもする。
毎日こっそり練習して、それでも上手くなれなくて。あまつさえ年下にもバカにされたんじゃ面目なんて丸つぶれだ。
それが原因で辞めることになったわけじゃないけど、間接的に影響があったのも確かで。
……今更当たっても仕方ないのに、こういうところがガキっぽいんだろう。
「ごめん、今の忘れて。同級にもいろいろ言われてたし、結局遅かれ早かれ辞めてたよ」
「でも!……っそれに、俺が悪いのはほんとだし、いつも突っかかってたから相沢先輩たちも……!」
「やめろっ!」
ガタンッと派手な音をたてて椅子が倒れる。
叫んだせいで頭が割れるように痛い。
ぐらりと視界が傾いで目の前が暗くなった。
次に光が戻ったときには床に尻餅をついていて、動揺を隠せていない浦野が俺の肩を掴んでいた。
「やめろ、お願いだから、その名前は出さないで……」
不意にこの間の夢が脳裏に蘇る。
暗い部室の中で先輩たちに囲まれて、押さえつけられて。
いくらやめてと訴えても無駄だった。
ませた年頃の俺より体格がいい男が集まって恐怖でしかなかった。
女なんてまだ知らない好奇心旺盛なやつらから受ける屈辱。
どうして俺だったのかは何となく検討はつくけれど、その時のことを思い出すと吐き気がする。
口の中が苦く感じる。息が苦しい 。
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