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カーテンを開けた窓から差し込む日差しにうとうととしていたとき、目の前にお粥の入ったお椀を乗せた盆が置かれて慌てて顔を上げた。
向かいの席に自分の分の昼食を持った浦野が座る。
「お代わりならまだありますんで、欲しかったら言ってくださいね」
「ん」
バラエティの流れるテレビの音量を下げて手をあわせる。
「いただきます」と言うと一拍遅れて浦野もそれに続いた。
スプーンを手に取り息を吹きかけて少し冷ます。湯気がゆらゆらと揺らめいた。
「味しない……」
「けっこう熱高いし仕方ないですよ」
苦笑する浦野にそんなもんかとお椀の中身を掬った。
梅干しの赤が米の白の中でよく映える。
またふーっと息を吐いて冷ましていると、じっとこちらを見つめる視線を感じた。
「……俺の顔に何かついてる?」
もしかしたら米粒でもついてたか?
うわ。小学生かよ、恥ずかしい……。
スプーンを持っていない左手でぺたぺたと
口の周りを触ってみる。あれ、ついてない?
「浦野?」
「へ?あ、いや別に」
声をかけると驚いたように目を見開き、慌てて俯いて箸を動かしはじめた浦野の頬は何故か赤かった。
……俺の風邪、移っちゃったかな。
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