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「じゃあこうしましょう。とりあえず風呂入るのはなし。蒸しタオルで体拭くくらいにしておいてください」
「そっちの方が面倒くさ、」
「さっきも言いましたけどのぼせて倒れられると困るんですって。汗流したいだけならそれでもいいでしょ」
強い口調で言い切られてしまっては返す言葉もない。
こいつの言う通りにするのは癪だが、世話してもらっておいて我が儘ばかり言うのもいけないと思い直し渋々頷く。
それに満足したのか掴んでいた腕をパッと離され、それから「部屋で待っててください」とリビングを追い出された。
「それくらい自分でするのに……」
世話焼きなのか、それともただのお節介なのか。
あの頃には見られなかった素面を知るたびにむず痒くなる。
「良いやつ、なんだろうなぁ」
昔から人当たりのいいやつだったことは知ってた。
先輩にも同級生にも好かれてて、だけど俺に対しての態度は最悪だったからそれ以上にマイナスイメージだっただけで。
……こんなふうにコロッと態度変えられたら、それはそれで困ってしまうけど。
「もうちょっと前向きに接してみるかな……」
いつまでも子供のままでいられないのは俺も同じなんだから。
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