なつのかぜ

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「え、と……」 照れる、っていうより、なんだろうこれ。 そんな褒められるようなことでもないのに大袈裟な、とは思うけど。 うれしい。のかもしれない。 自分にとっては当たり前でもこいつからするとすごいことで。 それを偉いって言葉で言ってくれて、「これくらい普通だろ」って思ってなくて。 あとなんか優しいし。いつものお前はどこいったってくらい軟化してるし。 偉い偉いと何度も頭を撫でられて顔に熱が集まる。 やめてほしい。ちょっと本気で対処に困る。 「先輩って褒められるのに弱い?」 「う、るさい!もうほんとにやめろ、むり」 「よしよし、いい子いい子」 「馬鹿にしてんのか!」 猫よろしく威嚇すると意地悪げに笑われた。 こいつのこういうところが嫌いだ。 マグカップの淵に歯を立てる。腹の中がむず痒くて変な感じ。 少しぬるくなったホットミルクを飲み込んで息を吐いた。 「お前の相手してると疲れる」 「俺は先輩と話すの楽しいですけどね。弄りがいがあって」 「性格悪いってよく言われるだろ」 「いえ、全っ然」 綺麗な笑顔で言い切った浦野に呆れるしかない。 そうだった。外面はいいんだよな、こいつ。
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