「なまえ」

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電車の揺れに眠気を誘われながら1時間ほど。 ついた駅で人の流れに逆らうことなく降車する。 大学に通じる方の改札を出たところで、見慣れた顔がスマホを弄っているのが見えた。 「おはよう、瑛太」 「おはよー環」 駆け寄って挨拶を交わす。 へらへらとした笑顔を浮かべる瑛太の隣に立って、そういえば、とふと思い出した。 瑛太と浦野は実の兄弟だと言っていたけど、こいつは俺と浦野が兄弟になったことは知ってるんだろうか。 あのときは何も訊かずに帰って行ったし、それからこの話をしたことはない。 ということは、あいつが瑛太と連絡をとってない限り知らないってことになるのか? 「なーに朝から変な顔してんの」 「いたっ」 突然額に小さな痛み。 どんな顔してたのか分からないけど、デコピンすることはないだろ……。 不満を込めて睨みつけると何故か笑われてしまった。 「なに」 「いやぁ、環ちゃんは今日もかわいいなぁと思って」 「は?」 いきなり意味の分からないこと言うなよ。 あとちゃん付けで呼ぶのはやめろと言ったはずだ。 「かわいくて家事もできる優良物件。これで女の子なら彼女にしてたんだけど」 「安心してくれ。頼まれてもならないから」 俺ならこんな合コン好き、彼氏にするなんてまっぴらだよ。 じと目で見られていることに気づいたのか、瑛太はゆっくり歩き出しなから「で?」と訊いてくる。
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