「なまえ」

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「正直言うと、そこまでは」 「そっかー。他人行儀っていうんだっけ?なんかよそよそしいもんな、名字で呼んでるの」 それは否定できないけどあいつだって俺のこと先輩って呼ぶし。 そこまで親しくもなく踏み込んで接していなかったから、いまさら名前で呼ぶのも違和感が拭えない。 グラスの中のアイスコーヒーを数回かき混ぜる。 瑛太は一気に中身を飲み干してから言った。 「まーさ、これから長い付き合いになるんだろうしよろしく頼むよ。あいつ、根は良いやつなんだ。けっこう生意気だけど」 それ言っちゃうんだ。 というより、小さい頃から生意気だったのな。 俺は曖昧に笑って残りを飲んだ。 よろしくと言われたのはいいけど、どうすればいいのかさっぱりだ。 ずっと一人っ子だったから兄弟との接し方も分からなし、そもそもあいつのことなんて全然知らない。 何が好きとか嫌いとか、誕生日や血液型だって。 それは多分向こうも同じなんだろう。 壁がある。そんな風に思った。
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