171人が本棚に入れています
本棚に追加
「正直言うと、そこまでは」
「そっかー。他人行儀っていうんだっけ?なんかよそよそしいもんな、名字で呼んでるの」
それは否定できないけどあいつだって俺のこと先輩って呼ぶし。
そこまで親しくもなく踏み込んで接していなかったから、いまさら名前で呼ぶのも違和感が拭えない。
グラスの中のアイスコーヒーを数回かき混ぜる。
瑛太は一気に中身を飲み干してから言った。
「まーさ、これから長い付き合いになるんだろうしよろしく頼むよ。あいつ、根は良いやつなんだ。けっこう生意気だけど」
それ言っちゃうんだ。
というより、小さい頃から生意気だったのな。
俺は曖昧に笑って残りを飲んだ。
よろしくと言われたのはいいけど、どうすればいいのかさっぱりだ。
ずっと一人っ子だったから兄弟との接し方も分からなし、そもそもあいつのことなんて全然知らない。
何が好きとか嫌いとか、誕生日や血液型だって。
それは多分向こうも同じなんだろう。
壁がある。そんな風に思った。
最初のコメントを投稿しよう!