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2限からちゃんと出ると言った瑛太と別れ、俺も自分の講義を受けるべく校舎内へ入る。
そうして最後の講義を終えて電車に乗った頃にはもう夕方だった。
今日は浦野と帰りが一緒になる。
どうやら俺の方が先についたみたいなので改札で待っていると、数分してからこちらへ歩いてくる浦野を見つけた。
「お疲れさまです、先輩」
「お前もな」
それ以上の言葉はない。
お互い無言のまま歩き出して駅を出る。
夏の風はぬるく頬を撫でて、人ひとり分空いた俺たちのあいだを通り抜けた。
「そういえば」
「はい」
「今日瑛太と話してさ、俺たちが兄弟になったこと言ったんだけど」
「何か言われました?」
「お前のことよろしくだって。生意気だけど根は良いやつとも言ってた」
部活帰りの学生が自転車を漕いでいたり、遊びから家へ帰る途中の小学生たちの笑い声が耳に届くなか今日のことを話してみる。
歩調を少し緩めた俺にあわせているのか浦野もゆっくりと歩いていた。
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