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「それでな、そう言ったときの瑛太、すごく『兄貴』って感じの顔してたんだ。どれだけ離れててもちゃんとお前のこと大事に思ってるんだなぁって感心した」
「兄さんはああ見えてけっこうブラコンでしたよ。どこに行くにも俺を誘ってきて、気づいたら俺もブラコンの仲間入り」
呆れたように笑っているけど、そこにはちゃんと瑛太に対しての愛情がある。
兄弟というのはみんなこうなんだろうか。
時間も距離も関係なしに無条件でお互いを好きでいる。
俺にはそれが、できるのだろうか。
「あー……」
「どうかしましたか?」
「ちょっと不安になってきた」
「不安?」
「そー。お前のこと何も知らないのによろしくって言われても、ちゃんと兄弟としてやっていけるのかなぁって」
カラスの鳴き声と夕闇に染まる道。
前方から小学生と幼稚園くらいの男の子がふたり、仲良く手を繋ぎながら歩いてくるのが見える。
そろそろ家が見えてくるという頃、浦野はおもむろに口を開いた。
「じゃあ、なんでも訊いてくださいよ」
「え?」
「知らないんだったら知ってください。それで不安がなくなるなら。あ、でも先輩のことも教えてくださいね。俺は先輩の全部が知りたいから」
全部、って。
笑顔で言われてしまってはどういう反応を返すべきか悩んでしまう。
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