「なまえ」

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呼ぶまで家に入れるつもりがないのか、いつの間にかドアの前に回り込んだ浦野が上から見下ろしていた。19にもなってガキっぽいことをする野郎だ。 ほらほらと促されるのがものすごく腹が立つ。ここで呼ぶのも癪だ。けど呼ばないと家に入れないだろうし、何よりこんなことで駄々をこねるのもやつと同じくらいガキっぽい。……とは思うんだけど。 「あれ、どうしたんですか、黙り込んで。もしかして恥ずかしい?」 「……っ」 このにやけ面、すっげえ殴りたい……! 自分の煽り耐性のなさに悲しくなるが許されるべきだろう。誰だってこんなのイラつくに決まってる。俺は聖人君子になんかなれなくていいんだ。口より先に手が出るのも多少は多めに見てほしい。 「まさか弟の名前を忘れたーなんてことないですよね?お、に、い、さ、ん」 「……だーもう!うるさい!け、慧介!」 怒りと小っ恥ずかしさで顔が熱い。くそっ。
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