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未練がましく、理事長の後ろ姿を見送る。
心の中でいつまでも手を振りながら、素敵な世界にしがみつくようにトリップしていたら、
「おはようございます、菜央先生」
後ろから声がかかる。
絶賛仕事中、ですから。
いやいや!(“いやいや”じゃないけど…)
でも、前も後ろ姿も魅力的過ぎる…
とてもとても40には見えない。
さっきのママさんの助言じゃないけど、誰かに恋でもしているのだろうか!?
だからあんなに若いのかな~?
名残惜しい。非常に。
いつまでもお花畑で駆けていたいけど、現実逃避を早々にお開きにして、自分の役に戻る。頭を切り替えて、声がした駅の方に向き直り、
「あっ…おはよう……ございます」
返した挨拶は、尻つぼみになってしまった。
まぁ、スタートからおかしかったけど…。
だって声をかけてきた人物が、この瞬間、積極的に関わる必要のない、むしろ、“わざと声、かけたでしょ!? ”って疑うほどに、ニタニタと悪い笑顔で立っていたから。
朝から、なんでしょうか?
できれば、許されるなら、朝から、いや、理事長との素敵な時間の直後には会いたくなかった。
そんなこと、言えないけど…
「菜央先生、そんな嫌そうな顔せんでも…」
「してないですよ~」
思いっきり“ここぞ!”で出す愛想笑いを相手に向ける。
これぐらい、いくらでもあげれますから!!
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