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それでも何も言わない、というか、言えない私に痺れを切らした藤崎くんが口を開く。
「じゃあ、俺が言う質問に『はい』で答えて」
これ、昨晩も桜木理事長にされた。
選択問題で『いいえ』がちゃんとあったけど…
こんなとこまで親子。
遺伝子の為せる技って恐ろしい…
「今日は晴れてんの?」
私の返事を聞く前に始まってしまう。
どこまでも、マイウェイだ。
だいたい何で、『はい』だけなの!?
「晴れてる?」
当然、これは答えるものなのだろう。
質問を繰り返される。
「………はい」
藤崎くんの表情の変化を見逃さないようにじっと窺いながら、恐る恐る声を発すると、
「今日って4月1日?」
すんなり次の質問に進んだ。
あっ、やっぱり声も似てるのかも。
だから昨日、勘違いしたんだ!
いやいや! でも、ホントに私のことだけ忘れてるとか? 私限定記憶喪失!?
まさか…まさかね~
「答えは?」
「は?」
「4月1日?」
「あっ、はい!」
考える隙を与えてもらえない。
一点集中型の私には『はい』と答えるだけでも、よそ事ができない。
「暖かくなってきたな?」
「はい」
「コート、そろそろクリーニング出さなあかんな?」
「はい」
「洗濯機で洗えたらええのにな~?」
「はい」
なんで、洗濯の話!?
「もうすぐ桜が咲くな」
「はい」
「やっぱり桜はええな~」
「はい」
「心、洗われるな~」
「はい」
“洗濯”に掛けた??
「花見とか行きたいな~」
「…はい」
「ドライブ、行きたいな~」
「……はい」
「その前に免許かっ!」
「はい」
「もうすぐ俺、18になるしな」
「はい」
「免許取れるな!」
「はい」
「酒は20から?」
「はい」
「俺ら、やり直されへん?」
「は……」
「元に、戻れる?」
「………」
「『はい』は?」
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