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目の前の王子様は、おそらく藤崎くんの存在がもっとも怖いなのだろう。
私と藤崎くんをくっつけたい、というか、くっついていて欲しいぐらいなのだから…
そんな人に『香月さんって、藤崎くんの元カノですか?』なんて聞くのは、火に油をタプタプ注いで、着火させるもの。
それより、
「波留野くんは、どうしてここにいるんですか?」
昨日の今日で藤崎くんが入院していることを何故、知っているのだろう。
元々、藤崎くんと友達だったの??
て、あ…れ?
何も出てこない。
私、知らない。
知らないことに気がついて、言葉を失う。
私は藤崎くんの交友関係を全く知らない。
それどころか、学校の話なんて聞いたこともない。
足元がグラグラする。
半年一緒にいたのに、藤崎くんから友達の話なんてされたことなかった。試験がどうとか、学祭がどうとか、友達がこんなバカなことしたんだとか、高校生らしい話なんてひとつも…
いつも、藤崎くんは聞き役で….
私のことをからかったりもするけど、食事のこととか、仕事のこととか気にかけてくれて…
俺様で強引にしているようで、実は、私の負担にならない程度にしか会いたいと言わなかった。
藤崎くんは頭がいい。高校生とは思えないほど大人だ。
仕事に手一杯の私のことなんて全てお見通しで、それでも、自分はホスト役を嫌な顔をしないでこなしてくれていたんだ。
藤崎くんはちゃんと私を見て、理解してくれていた。
見ていなかったのは、私。
仕事が忙しいと、“大人”を言い訳にして甘えていた。
昨日の夜、感じた違和感ー
あれは違和感というよりは、むしろ、“知らないこと”を認めたくなかった言い訳だ。誤魔化そうとした。そこに収めて、逃げたかったんだ。
別れた原因が自分自身にあったことから。
自分が知る努力も向き合う時間も作らなかったのに、本物も、偽物もあるわけないのに。
藤崎くんがどう、とかじゃない。
藤崎くんに非があったわけじゃない。
私自身に問題があったんだ…
与えられるままに返すこともなく当たり前の顔をして、抱き締められていた私が….
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