カギ

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「食事会と言っても、あの、学祭とかの協力のお願いであったり、同じ駅を使うので、まぁ、色々と事情があるみたいで…」 “みたい”って進んで行ったわけではなく、連れていかれたのね。 大地だったら率先して行きそうだけど。 「それで、散会した後に、その中の一人に声をかけられて付いてこられてしまって…」 「うん」 「年上の女性に、どうお断りをしたら良いかわからずに、困ってしまって…」 「…うん、うん」 「言い方が悪いんですが、あの、『キスだけ』って迫られている時に沙世さんに偶然それを目撃されてしまって…」 おおっ!! それは、それは! 王子様は草食系だ。王子様から働きかけたわけじゃないことぐらい彼女にもわかる。でも…肉食女子に食べられそうになっている図というのは、うーん。過去の自分の失敗があるので、コメントできる立場にはないけど…。 「いや、でも、あれは偶然というか故意だったような、事故のような、結(ゆい)のイタズラなのかもしれないですけど…」 偶然は事故だけど、故意だったら、もはや、事故じゃないような…。とにかく仕組まれたってことなのかな? その“ゆいちゃん”って子に… 「そのピンチの状況で、たまたま駅にいた藤崎さんが助けてくれたんです」 えっ… なんで……? 藤崎くんが!? 「泣いていなくなった沙世さんを『とにかく探せ! 追いかけろ!』って藤崎さんが言ってくれて…」 そこまで事情を話して、申し訳なさそうに下を向く王子様。 本意ではないけれど自分がしたことで、他人にまで迷惑をかけたことを悔いているように見える。 ここまでの流れで概ね掴めた私は、確認の意味もあって口を開く。 「その女性って、ストレートのロングの黒髪だよね?」 「えっ!?」 バッと顔を上げた王子様は、目をまん丸にして私を見る。 「これぐらいのヒール、履いてたでしょ?」 珍しく履いてきた自分のハイヒールを指差すと、うん、と大きく頷いて、 「そうです」 と、答えた。 昨日の夜の登場人物が、全員出揃った。 『俺にしときましょ?』 そしてこの言葉の意味も、繋がった。 藤崎くん… バカだ。 どんな小さなチャンスも取りこぼさない人が、最大のチャンスを恋敵に渡すなんて… 違う…か…… 渡したんじゃなくて、香月さんの気持ちを大事にしたんだ。泣かせたくなかったんだ。自分を犠牲にしてでも… あぁ~… どんだけ、好きなのよ。
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