カギ

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やっぱり、敵わないと思った。 私が入る隙なんて、ない。 “二人の間に”ではなくて、藤崎くんの気持ちに… 香月さんは藤崎くんの元カノだったのだろう。 時期的には私と二股だったとしても仕方のないタイミングだったけど、本命と付き合えたからといって、すぐに私を切り捨てることは出来なかったのかもしれない。 時間をかけて私と別れ、でも、原因はわからないけど、その後、香月さんとも別れることになった。 でも別れたからといって、藤崎くんはそんな簡単に終わらせることなんてできなかったのだろう。 私が藤崎くんを思うように… そんな時に事故にあい、病室で目が覚めた時に手を握ってくれている人がいた。女性の小さな手だった。直前の流れとしても、香月さんだと思うだろう。さらに両目が利かない状態で、病室は薄暗かったから勘違いしても仕方がない。 昨晩のあの言葉は戻ってきて付き添ってくれた彼女に対して、藤崎くんから出た本心だ。彼女の為を思って一度は譲ろうとしたけど、彼女が自分を選んだことがきっと、嬉しかったんだろうな… 『かづき…大丈夫…?』 最初に出てきた言葉は、真っ直ぐ揺るがない藤崎くんの彼女に対する思いそのものだ。 それに勝てるはずなんて、ない。 「波留野くん、私と香月さんってそんなに似てる?」 最後にもう一度、確かめておきたかった。 彼女を一番近くで見ている彼氏である王子様に。 「似てると思います。沙世さんの数年後というか、お姉さんのような感じです」 「そっか…」 「目が大きくて、ちょっと小動物系です!」 「モモンガ!?」 「いえいえ! リスとか…そんな感じですよ。可愛いと褒めてるつもりなんですが…」 これって褒めてないですか?、と首を傾げる。 王子様のほうがよっぽど可愛い。 「ありがとう」 今のお礼は褒められたことに、ではない。香月さんと似ていることを教えてくれて、ありがとう、という気持ちだ。 香月さんに似ていて良かった。 半年だったけど、抱きしめられて、ぬくもりを、ぬくもりの中にある安らぎを知ることができたから。強がりでも、今は、こう思わないと前に進めない気がした。 「でも、話してみて気付きました」 「…??」 「性格はたぶん全然違います」 「性格?」 「菜央先生は人見知りもしないし明るくて活発でしょ? 売られた喧嘩はバシバシ買っちゃうタイプですよね? 」 「…そうかも」 負けず嫌いだ。負けん気だけは強い。
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