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「ですよね? 沙世さんとは真逆のタイプです。そういうところ、藤崎さんとお似合いだと思います」
「えっ?」
「対等に渡り合えて、喧嘩しながらも理解して、相手の存在を大事にしてそうですから」
「あっ……」
目の前で王子様がふんわりと笑った。
否定することをやんわり封じ込めるように…
王子様、違うんですよ。
付き合っていたことは間違いないです。
でもすごく大きな勘違いをしていますよ。
香月さんが私に似ているんじゃないです。私が香月さんに似てるんです。だから藤崎くんに一緒にいてもらうことができたんですよ。
でもこれは、言わない。
たくさん話をしてくれたお礼だ。
全てを話すことが正しいことではない。
王子様の不安の種を少しでも取り除けるなら、話さないことも大事だ。
「波留野くんは、藤崎くんに会いました?」
ここで会うということは、今、行ってきての帰りだろう。
「はい。予想以上に…」
「予想以上に?」
「元気過ぎました。動けないせいか、さらに、口が立ってましたよ」
「アハハハ!!」
「笑い事じゃないですよ! 『お前らが余計な食事会とかするから大怪我や! 責任取って、俺の為に頑張って働け』って!確かに、足止めしたせいで事故にあったのかもしれないですけど、ちょっと言いがかりだと思いません!? 」
どうだろう?
携帯を出してたのも、もしかしたら、あの女性にお引き取り頂いた後に、香月さんのことが気になってみんなに連絡を取ろうとしていたのかもしれないし…
一概に言いがかりとはいえないかもしれない。
どこまでいっても、藤崎くんは香月さん一色、だからね…
あ~
自分の好きな人が別の人を一途に思ってる。
そんなことで、また、好きにさせられているなんて、真性Mだわ、私。
とりあえず頭はしっかりしているようで良かった。逆に考えれば、これからまともな藤崎くんと久しぶりに話すことになるということだ。
プレッシャーというか、緊張する。
「菜央先生は今からですよね?」
「…そうですね」
迷ったけど、今更、否定したところでどうということもない。
「大丈夫ですか?」
「体調? 大丈夫です」
「ヒール!」
どうもアンバランスに見えるハイヒールをチラッと見られる。
「大丈夫ですよ! 先ほどは壁になって頂いてありがとうございました」
「トンデモナイです! 役得でした」
何が得だったのだろう。
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