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「は!?
またフッたん?
鈴木君、良い人じゃん!
フる以外の選択肢持ち合わせてないんか!?」
ボブヘアーの女子が思わず立ち上がり、紺色のセーラー服のスカートを揺らす時、食堂にいた人達が皆振り返る。
紅葉は向かい側の席に座り、何事もなかったかのように、杏仁豆腐をスプーンで掬っている。
紅葉の横に腰かけていた二つ結びの女子は丸っこい目を左右に忙しなく動かし、口元に人差し指を当てる。
「ちょっ!声大きいって、桜子(さくらこ)!」
そう言われて初めて、桜子は周りの視線に気づき、さっと座る。
「そだね。
でも正直フリ過ぎだと思わん、文香(あやか)?」
文香は人差し指を下ろし、テーブルの上に手を置くと、困った顔で笑う。
「う~ん。
そうね…
まぁ、少ない方ではないような…」
文香はチラリと紅葉を見たが、紅葉は怒った風でもなく、黙々と杏仁豆腐を口に運んでいる。
何も言わない紅葉に対し、桜子は溜め息をつく。
「付き合う前にフらなくなっただけ進歩なのかもしれないけど、付き合ってから1週間も経たないうちにフるんじゃねぇ…
そもそも毎回何が気に入らなくてフるの?」
紅葉はスプーンを口から出し、口をモゴモゴさせながら言う。
「全くときめきを感じない」
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