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「……ごめんなさい。
貴方のこと好きになれません。
……私、好きな人がいるんです」
放課後、葉桜の下で栗色の髪の男子に言った「本音」――
初めて言った「本音」は頬を熱くさせる。
そして「そう…だよね」の返事は、私の心を震わせる。
初めてちゃんと見た気がする――
ふられた人の表情――
少し瞳を潤ませ、泣かないように無理して笑う顔――
多分、あの時の私もこんな顔すれば良かったのかもしれない……
或いは目の前で泣けば良かった……
そうすれば何かが変わったのかもしれない……
数年経っても、まだ好きなことを思い知らされる。
食堂で会ったのは、恐らく「黒須縁」――
彼と似てる誰かなら、そもそも私に声を掛けないだろう。
それに彼は過去の私が彼にしたことを知っていた――
私は休み時間の度に黒須を捜し回ったが、らしき人はいない。
先生方にも聞いて、転入生ゼロは確実な情報となった。
……「黒須縁」は何処にいるのか?
もしこの学校の生徒でないのなら、何をしにわざわざ私の所に来たのか――
……今更何を彼がしたいのか、正直分からない。
あの時――彼が転校すると分かり、辛すぎて八つ当たりした時――
私に「嫌い」と言われ、喧嘩した彼が、わざわざ私の所に行くとは思えない――
あの後、引っ越す日まで彼は私を無視し続けていたし……
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