巡り会ひて

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「は?学校職員? 17でそんなのなれる訳ない……」 呆れた顔をする紅葉に対し、桜子はドヤ顔をしている。 紅葉は溜め息をつき、桜子に言う。 「……桜子。何故そんな自信満々な訳? 普通に考えてそれはないでしょ……」 「ところがあるんですな、それが!」 ニヤニヤして頷く桜子に紅葉は少し苛立ちを見せる。 「何? 勿体ぶらずに早く教えて!」 桜子は得意気な顔をして指を差す。 桜子の指先は校舎に併設された食堂に向けられる。 紅葉は眉間に皺を寄せ、桜子を見る。 「は? あそこの従業員か何か? どうやって入り込んだのよ?」 桜子は紅葉の肩をポンと叩くと、ニヤリと笑う。 「まぁ、どうやったかまでは知らんけど、偽名とか年齢詐称とかはしてそうやね。 文香の話だと、新田(にった)って名札付けて仕事してたらしいけど……」 紅葉は立ち上がり、窓の外を見ながら、口元に手を当て暗い表情をする。 「……うん。 少なくとも新田ではない。 何故そんなことしてるのかしら……」 紅葉が悩み始めると、桜子は紅葉の背中を押す。 紅葉が「えっ?」と言って後ろを向くと、桜子は笑顔で手を振る。 「兎に角行ってきな! 今、文香が新田さんを足止めしてくれてるから……」 紅葉は驚き、目を輝かせたが、すぐに恥ずかしそうに目を逸らす。 「……なんでそれを早く言わないの? 文香にその役はキツイって!」 その時、教室の扉がガラリと音を立てて開き、文香が息を切らして入って来る。
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