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文香は紅葉の手を引き、必死で伝えようとする。
「い、今、レシピ聞きたいんでメモ取って来るから待って下さいって言ってきたよ……
でも長くはもたない……
帰りたそうだったし……
頑張ったけどごめんね……
早く行ってきて……
未だ職員の昇降口にいるはずだから……」
紅葉は文香の手を握りしめ、さっと離すとニコッと笑う。
紅葉の瞳は煌めき、頬はほのかに赤くなる。
「文香、桜子……ありがとう」
それだけ言うと、紅葉は踵を返し、バタバタと足音を立てながら廊下を走っていく。
紅葉の姿が見えなくなると、文香と桜子は顔を見合わせる。
桜子はニヤリと笑う。
「これは……loveですかね?」
「多分loveかと思いますよ~」
おどけた様に言う文香に桜子が吹き出すと、文香もつられて笑い声を上げる。
二人は青い空に白線を引く飛行機を見ながら、友達の成功を祈り始める――
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