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翌朝、桜子と文香は楽しげに話しながら学校の廊下を歩いていた。
「上手くいったかな~」
ニコニコしながら話す文香の肩を桜子は軽く叩き、ウィンクする。
「上手くいくやろ!
文香が引き止めてくれとったし!
あれで上手くいかんかったら……」
「あっ!
紅葉来てるよ~
早速聞こっ♪」
椅子に座り、机に突っ伏し、顔を隠すように両腕を枕にして寝ている紅葉を、教室の扉の硝子窓越しに見た文香は指さす。
文香は笑っていたが、桜子は机の所で誰とも目を合わせないようにしている紅葉が気になり、文香に囁く。
「……ねぇ、やめといた方がよくない?
何となくだけど……
あれは喜んでるようには見えん…………」
「え~?
そうかな~?
でも気になるよ~」
そう言って文香は元気良く扉を開け、紅葉のもとに走る。
その後から桜子は心配そうな顔をして、とぼとぼ歩いていく。
文香は紅葉の席の前に行くと、寝ている紅葉の肩をツンと人差し指でつつく。
文香がつつくと、紅葉はゆっくりと顔を上げる。
真っ赤に充血した目、目の下で綺麗な弧を描く隈――
そんな紅葉を見た桜子は、紅葉に見えないように文香のセーラー服を引っ張ったが、文香は全く気づかず、笑顔で尋ねる。
「……ねぇ、昨日あれからどうなったの?」
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