思い出

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あれは英語の後の昼休み― 教室から出た私に黒須は笑顔で声を掛けた。 「おっ、紅葉! 今から食堂行くのか?」 私はいつものように無表情で軽く会釈すると、黒須の後ろにいた男子がこう囁いた。 「......おい。 やめとけよ、あんな地味女に声掛けんの。 相当な変わり者だぜ、アレ。 誰とも話さないし、笑わねぇし...... あんな気味悪い女に友達なんて.....」 ドンッッッ 私は一瞬何が起こったか分からなかった。 気づいた時には、男子の顔の脇を黒須の拳が横切り、壁に当たった衝撃音が響き渡り、周囲の人達を振り返らせる。 男子も何が起こったか分からず、目を白黒させた。 黒須は今まで見たことないくらい怖い顔してる― 「......お前、それ、本人の前で言ってみろ!! 紅葉は......お前らが変えたんだ!!! 何をされても、言われても喋らないのは、自分を守るためだ...... あの子は話しかければ目を見てくれる。 楽しい話をすれば、微笑む。 そんなことさえ気づかずにお前は彼女の何を見て変わり者と言えんだ!? ちゃんと見もしないお前の言葉より、俺は目の前にいる紅葉を信じる!」 その後、黒須が何を言っていたのか覚えていない。 あの時私は自分の涙を、溢れ出す感情を抑えるのに必死で駆け出したことしか覚えていない...... そしてあの時から三年の月日が流れ、私は17歳の誕生日を迎えた―
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