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「━━━気持ち悪い……………………」
「大丈夫……?
馬車にするべきだったかな?」
車になれていない僕は大分酔った。
お屋敷について客間に案内されたが、酔いが酷くて話ができない状態だったため今男に膝枕された状態でいる。
「うぅ………」
「狐に戻らなくて大丈夫?」
「……妖力とは関係ない。だから大丈夫。」
「……そう。今君の父上を呼んだから、直ぐに来ると思うよ。」
「父さんが?………ありがとう。」
お礼を言うのは何だか恥ずかしくて、少し声が小さくなったけど男には届いていたみたいで、頭を撫でてくれた。
その手が暖かくて、次第に頭が霞がかって瞼がどんどん落ちていった。
次に目が覚めたのは夕方。相変わらず男の膝の上で寝ていた。
そして目の前には父さんと母さんが。
「とーさん、かーさん…………」
「ああ!よかった、起きたのね?!」
母さんは目に一杯涙をためて僕を抱き上げてきた。
「……イシュカ、ありがとう。娘を助けてくれて。
本当に感謝している。」
父さんも涙声で男に話しかけていた。
「全く、普段笑顔の君がこんなに表情を崩すとはね。
気にしないでくれ。私も息子に言われなければ気が付けなかったからね。」
「本当に、本っとうにありがとうございます!
どのように恩をお返しすればいいやら……」
「恩返しなんていりませんよ。」
母さんの腕の中で母さんの温もりに触れていると、扉の方に人の気配を感じた。
そちらを見ると同い年くらいの男の子が此方を遠慮がちに覗いていた。
母さんの腕から抜け出して近づくと、男の子が部屋に入ってきて僕らは向き合う形になった。
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