転居

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 ウィルと遊んだ日から早一ヶ月が立った。 あれから一度も会いに行ってないが、今日突然母さんに大荷物を持たされた。 「……母さん、いつも唐突なんだが少しは説明してくれない?  なぜ僕だけこんな大荷物になってるの?」 「あら?話してなかったかしら。  貴方は明日からフェアフュールング家でお世話になるのよ。」  僕の空耳だと信じたいのだが。 取り敢えず現実として受け止めるから一言言わせてくれ。   どうしてこうなった。  母曰く僕を学校に通わせたいんだが。とフェアフュールング当主に相談したところ、 「ああ、それならフェアフュールングの家に養子として引き取って入学させればいい。」  と軽いのりで話が進んでいったらしい。 僕の周りの大人はろくな人がいなさそうだ。  と言うわけで山の麓まで重たい荷物を運んできたわけだが遅い。 フェアフュールング当主が迎えに来ると聞いていたんだが…………  しばらく待っていると、豪華な馬車がこちらに向かってきた。 中からフェアフュールング当主とウィルが出てきた。 「セラス!」 「ウィル!久しぶりだね!」  つい嬉しくてウィルの手をとり、指を指の間に入れてギュッと握りしめた。 「セ、セセセセラス?!」 「?どうしたのウィル。顔が真っ赤じゃないか。  風邪でもひいているの?」  ウィルが突然耳まで真っ赤になった。 何かあったのだろうか?もしかして僕が何か気にさわることでもしたのだろうか?  一人で焦っているとフェアフュールング当主が吹き出した。 「ブハッ……いや、失礼……くくっ……そ、そろそろ行こうか……ふふっ……」  この親子に何があったんだ。 二人揃って様子が変なんだが……
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