せめて甘いひとときを

2/25
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
◆・◇・◆ 《小糠雨(こぬかあめ) 》  亜里の前には、四歳下の男が居た。  あれから二年の歳月が過ぎている。 職に就いては、身体を壊すことばかりを亜里は繰り返していた。  ありとあらゆる道具の揃う、ウッド調でまとまった男の部屋。 間接照明だけが灯されている。  闇夜のように沈んだ亜里の瞳。 白い肌を横たえる亜里へ近付いた男が、火の付いた煙草を亜里に咥えさせる。  煙草を吸い込むと妙な味がした。 嫌な感じではないが、ただ妙な味。 「これは?」 「ハーブ。少ししたらクラクラし始めるから、あまり吸い込み過ぎないで」 「そう」  男の言葉を聞き流して、亜里は思い切りそれを吸い込む。 特に違和感はなかった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!