第1話・約1週間前

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 こうして波乱の一日が終わった訳だが、それは桐島も同様である。彼らは天体観測会をどうするつもりなのだろう。脅迫文書さえなければ、彼の予定通りに準備が進行すれば、ちょうど一週間後に天体観測会が行われるはずだったのに。やはり中止になるのか。  どちらにせよ、僕の知ったことではないのだが、皆川から犯人探しの手伝いを強制されている今、そうも言っていられない。  僕らは自然と、日向側と日陰側に分かれた。派手か地味か、出来た奴か出来ない奴か、それとも部活の人気優劣か。基準こそ様々で、互いの干渉もあまりないのが通常で。お互いにうかがい知れない部分も多く存在する。  もっぱら人間観察する僕にも、分からないことはたくさんある。いや、見ているだけだから、見えてこないものもあるのか。皆川が桐島と親しかったなんて、初耳だ。  皆川といい、山鹿といい、クラスのヒーロー桐島にも隠されていた秘密が、僕の見えてこなかった”なにか”があるようだ。そこに、僕が抱いた謎の怒りの、原因もあるだろうか。  そんな、僕の、僕らの犯人探しは始まった。後戻りのできない深みに、自ら歩めるように。
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