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 枕元に置いてあったスマートパッドの不快な振動でナオトは目を覚ました。    どうせメールだろうと二度寝しかけるも、メールの場合の三回を越えても一向に終わらない振動が寝つきを妨げる。    諦めて画面を覗き込むと、現在の時刻を示す7:30と母親の名前があった。   「…あのババア、今日から春休みだってのに何考えてんだ」    母の名を睨めつけるナオトの目に憤怒の火が灯る。    昨日の終業式で三学期を終え、オンラインゲームにSNS巡りに動画閲覧と心置きなく夜更かしを満喫したナオトにとって、最悪の寝覚めだ。   「ババア! 休みの朝からなんなんだよ! マジふざけんなよ!!」   『ナオトかい? 開口一番にそんなに怒らなくてもいいじゃないかい』    怒気をまき散らすナオトを画面越しの母、ハツミはおっとりした口調でたしなめる。    その様がナオトの癇に障るが、さっさと寝直したいがために早く話しを切り上げにかかる。   「用があるならさっさと言えよ!」   『ナオト、あんた牛肉と豚肉ならどっちが好きだい?』   「は?」    あまりにも拍子抜けする質問に、ナオトの思考は煮えたぎる。   「わざわざなんなんだよ!  しょうもないことで電話してくるな!!」    さしもの母も、剣幕に押されてのけぞった。   『そりゃあ悪かったね。  …で、どっちだい?』   「牛肉!  ったく、もう切るぞ!」   『牛ね。ハイハイわかったよ。じゃあね』    ぶつけたい激情が渦巻いていたが、頭に血が上り過ぎて、それも上手く言葉にならず、乱暴にタッチして回線を切り、スマートパッドの電源を落とした。    苛立たしいが、今はそれよりも睡眠欲を満たしたかった。    布団をかぶり直し、ナオトは瞼を閉じた。
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