10人が本棚に入れています
本棚に追加
でも"人間"かどうかを決めるのはそれだけじゃないと、ナオトは思う。
照れくさそうに頬を掻きながら、自分がモモをどう思うのか、それを伝える言葉を探していく。
「でも、モモは笑ったり泣いたり、目標があったり、他人を気遣ったり…
…なんつーか、こう…心を持ってるじゃないか。
それって、もう人間ってことで良いんじゃないか?」
「そんな…私はただ、話せるように作られてるだけで…」
「音声認識機能だけじゃないだろ?」
「お…オンセンニンキ……?」
聞き慣れない単語だったようで、ただでさえナオトの話に困惑気味だったモモが険しくなる。
その反応が面白くて、ナオトの顔から自然と笑みが零れる。
「そうそう、それそれ!
機械と話してたら、こうはいかないからな」
モモと話していると、家畜と話している気なんてしない。
言われたことをただやるだけの音声認識インターフェースや、アルゴリズムに従って反応を返すゲームのキャラとは違うのだ。
モモにはナオトの言わんとすることは理解できなかったが、自分を好意的に見てくれていることはなんとなくわかった。
「でも…でも私は、人間として生きてはいけないんです。
…それは、家畜の私には許されていませんから」
「……っ!!」
そう言って少し寂しげに冷たい川面を見やるモモの横顔に、ナオトはなにに憤っていたのか気づかされた。
生まれた経緯や生物としての性質はどうあれ、モモは人間らしい心を持ち人間を思いやれる、人類の友達になれる存在だ。
なのに、その優しい心に"家畜"としての生き方を押し付け、刻みこんだ者がいる。
最初のコメントを投稿しよう!