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 でも"人間"かどうかを決めるのはそれだけじゃないと、ナオトは思う。    照れくさそうに頬を掻きながら、自分がモモをどう思うのか、それを伝える言葉を探していく。   「でも、モモは笑ったり泣いたり、目標があったり、他人を気遣ったり…  …なんつーか、こう…心を持ってるじゃないか。  それって、もう人間ってことで良いんじゃないか?」   「そんな…私はただ、話せるように作られてるだけで…」   「音声認識機能だけじゃないだろ?」   「お…オンセンニンキ……?」    聞き慣れない単語だったようで、ただでさえナオトの話に困惑気味だったモモが険しくなる。    その反応が面白くて、ナオトの顔から自然と笑みが零れる。   「そうそう、それそれ!  機械と話してたら、こうはいかないからな」    モモと話していると、家畜と話している気なんてしない。    言われたことをただやるだけの音声認識インターフェースや、アルゴリズムに従って反応を返すゲームのキャラとは違うのだ。    モモにはナオトの言わんとすることは理解できなかったが、自分を好意的に見てくれていることはなんとなくわかった。   「でも…でも私は、人間として生きてはいけないんです。  …それは、家畜の私には許されていませんから」   「……っ!!」    そう言って少し寂しげに冷たい川面を見やるモモの横顔に、ナオトはなにに憤っていたのか気づかされた。    生まれた経緯や生物としての性質はどうあれ、モモは人間らしい心を持ち人間を思いやれる、人類の友達になれる存在だ。    なのに、その優しい心に"家畜"としての生き方を押し付け、刻みこんだ者がいる。
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