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確かに、研究所が作ったものだし、法律的には人権の無い家畜なのだろう。
だが、同様に人格を持ち対話の出来る生命体がいたとして、例えばそれが遥かに科学技術の発達した宇宙人だったとしたら?
人類はそんな態度を取らず、友好的に接するか、悪ければ服従するかもしれない。
普段は美辞麗句を並べて道徳を語る指導者達も、詰まるところ弱者は虐げ、強者には屈服するのだろう。
モモを通して透けて見えるその事実に、途轍もない嫌悪感を覚えた。
これでは17世紀の黒人奴隷から、何も進歩してないとさえ思えた。
現状、ナオトの想像の部分が大きいし、それが当たっていたところで、法治国家である日本においては勝手な考えなのだろう。
だが、モモには人間として生きて欲しいと、ナオトは思う。
「ナオトさん?」
眉根を寄せて、モモがナオトの顔を覗き込んだ。
「……ん!? ああ、ごめん考えごとしちまってた」
「ちょっと怖い顔になってましたよ?
……やっぱり私が家畜というのは嫌ですか?」
「うーん……そうだな、モモはオレの世話してくれるって言ってたし、お手伝いさんぐらいならともかく、家畜っていうのは正直抵抗があるな」
呼称を変えたところで、モモの意識ややることは変わらないだろうと、ナオトにもわかっていた。
「私は幸せですね…
ナオトさんはまだ会ったばかりの私のこと、私よりずっと真剣に考えてくれています」
「……モモ」
それはきっと違う。
研究所で生まれ、家畜であるということを教え込まれていたモモ達には、そんなことを考えることさえできはしなかったのだ。
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