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 考えごとしてたと言ったナオトとて、考えたというよりは感じたことを言葉にしたに過ぎないのだ。    本当の意味で考えるのはこれからだ。   「そうだ、ナオトさん。  私のお肉食べてくださいましたか?」   「……いや、悪いけどまだなんだ」    ナオトに肉を拒否されたショックは、モモが飛び出した原因だった。    モモを迎えにきた手前、それは言い出しにくかった。   「私のわがままかもしれないですが、ナオトさんにも私を食べて欲しいんです。  …なにも持ってない私があげられるのは、この身体しかありませんから」    人として生きた経験が無く、捧げるべき自己というものが無い今のモモにとっては、自身を捧げることが感謝や愛情の表現のひとつなのだろう。    しかし、それはモモを家畜と認めるようで、ナオトには受け入れ難く返答に窮する。   「私が家畜と言っても、ナオトさんは私に人として接してくださると思うんです。  でも私が人としてナオトさんに接するには、どうしたらいいかわからないんです」    小難しく考え過ぎじゃないのかとナオトは思うが、モモからすればそうなのだ。    ナオトの言う"人間"というのが、家畜のモモにはわからない。   「だから、ナオトさん。  ご厚意に甘えるようで恥ずかしいですが、私にナオトさんのお世話をさせていただいて、ナオトさんから人のことをいっぱい学ばせてください!」    それがモモの出した答えだった。   「ああ、そういうことなら…  こっちこそよろしくな!」    ナオトにとっても、それが妥当だと思えた。    そもそも、2人…あるいは1人1頭との関係は、ちゃんと始まってすらいないのだ。   「それでですね、ナオトさん…  ……その…実は私、生でもイケるんですよ?」
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