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「ナオトさん…あの…」
アホなことを考えている場合じゃなかった。
特に異性絡みで慣れない事態に遭遇すると、たびたび意識が目の前の現実から乖離するのがナオトの悪いクセだった。
「……すまない。
じゃあ、いくぞ…なるべく痛くないようにするから」
「はい!
私にはご褒美ですから、ガブッといっちゃってください!!」
努めて明るく振る舞うモモだったが、ナオトには無理をしているように見えた。
出会ったときの反応からわかっていたが、家畜だなんだと言っても、やはりモモは身も心も女の子なのだと改めて思い知らされる。
ナオトは意を決してモモの乳房にかぶりついた。
柔肌に歯が深々と食い込むが、かなり力を込めても噛み切るには至らない。
「……ぁんふっ!」
耳元で喘ぐモモの声にナオトは顔を上げようとするが、モモの腕が頭を抱え込んでできなかった。
「大丈夫…大丈夫です……そのまま…」
声も腕も、震えていた。
覚悟が足りなかったのは自分のほうだ。
ナオトは今一度、強く、強く力を込めて、モモの肉を噛む。
前歯が、犬歯が、ぶちぶちと皮膚を食い破る不快な感触のあとは、あっさりと肉が千切れ、遅れて鉄のような血の匂いが口の中に広がった。
「あっ……んあぁああっ!!」
どこか悲痛で、それでいて熱を帯びていて甘いモモの声が、橋の下に響いた。
ナオトの頭部を固く抱き締め、まるで痙攣するように身を弾ませながら、モモはその体勢のまま膝から崩れ落ちた。
「……はあっ…はぁっ…」
肩で荒い息をしながら、ナオトの頭を愛おしげに掻き回す。
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